- 2022.10.14
- お知らせ
プロのアーティスト達のボイストレーニングを担当していると楽曲の「キー決め」と言われる仕事を依頼される事があります。
オリジナル曲を書いている方にも、カラオケで歌う方にも参考になるかと思いシェアしようと思います。
キー決めとは多くの場合で、オリジナル楽曲、もしくはミュージカルなどの公演の中で歌う曲のキー設定を行う事です。
ミュージカルの場合、多くの場合で決められたキーで歌う事が原則となりますが、アーティストや名前や歌声が非常に有名な方の場合「アーティストの歌声の持ち味を活かせるキー設定」と言うのが重要になるので、現実的な話しとしてキー変更はよくあります。
では何がキー設定の重要な要素になるのでしょう?
1 アーティスト自身がある程度快適に歌える事
一般的に考えれば快適に歌える事が最優先されると考えられます。
あまりに低すぎる、高すぎると言ったキー設定では歌う事がストレスとなってしまいます。
2 誰が聴いてもそのアーティストのカッコいい歌声である事
プロの現場では歌声がカッコ良く聞こえる事。これがキー設定をする上で最も重要な項目と考えます。
あなたが好きなアーティストの歌声を聴く時、目をつむっていても「あ、この人の歌声だ」と気付くと思います。
それがそのアーティストの「根本的な声」と言えると思います。
僕がボイストレーニングを教える際にとても参考にしているジュリアード音大のオーレン・ブラウン氏(既に亡くなっております)はこの声をPrimal Sound, Primal Voice(根本的な声)と呼び、僕のボイストレーニングの中ではクライアント様と一緒にPrimal Soundを探す事に重きを置いています。
Primal Sound(根本的な声)とは?
1つ例を挙げると好きな音程で
「あ〜〜〜〜」と声を伸ばしてみてください。
それは本当にあなたの声でしょうか?
恐らく多くの人が「YES」と言えるでしょう。
では、その「あ」の母音はあなたが歌手として誇れる声でしたか?
と聞かれれば多くの人が悩むと思います。
声は非常に柔軟性があり、色々な声色を出す事が出来ます。
「あ〜〜」と言う発音でも、少し鼻に掛けたり、顎を開いたり、軟口蓋を挙げたり、唇を横や縦に少し動かすだけでも色々な「あ」の母音が出てきます。
でもその中であなたが歌手として誇れる歌声はどれでしょう?
ボイストレーニングの大きなテーマは「あなたと言うアーティストが誇れる声はいったい何でしょう?」と言うのを探す事だと言えると思います。
少し話しがそれましたが、キー決めはアーティストの最も魅力的な歌声を引き出せるキーを探す事です。
実際にレコーディングで1コーラス、キーを変えて歌ってみて、どちらがカッコいいかみんなで相談する事はよくあります。
それくらい重要なプロセスなのです。
桜田は、Primal Soundが既に出ているアーティストについては、そのPrimal Soundが最も出てくるキー設定を行います。
キーが一個違うだけでそれは薄れて聴こえ、歌声にピタッとキーが当てはまると、まるで霧が晴れたかのように「誰がどう聞いてもそのアーティストを代表する歌声」になります。
美しい声と歌いやすさは一致しない事もある
時には「アーティスト自身がある程度快適に歌えるキー」と「そのアーティストのカッコいい歌声であるキー」が合致しない事もあります。
その場合、桜田が担当しているアーティストには「ちょっと難しいですけど、このキーが僕には○○さんのカッコいい声に聞こえるので、練習して歌いやすくしていくのが良いかもしれないね」と提案します。
どうしても公演までの時間がない場合は今、歌いやすいキーを選ぶ事もあります。
この様に「歌いやすいキー設定」と「カッコ良く聞こえるキー設定」で折り合いをつけるように考えていきます。
まとめ
キー設定は、アーティスト本人が歌いやすい事、カッコ良く聞こえる事の両立を目指していきます。
・・・と言う訳でプロのアーティスト達は何パターンも歌い比べてキー設定をする事はよくある事なのです。
なので、アーティストのオリジナルキーの設定だけではなく、あなたの歌声を最大限に活かせるキー設定を探してみてください。
おまけ。でもすごく効果的な練習法は・・・・
あなたがもしキー設定に悩んでいたら、自分で録音をしてどちらが良い声で歌えているのか判断すると良いと思います。
なんとなく良いキーが見つかったら試しに半音上、半音下でそれぞれ歌ってみて、歌った感覚、聞いてみた感じを観察してみてください。
多くの場合、半音上にした場合、元キーよりも軽やかに歌う必要があります。
半音下にした場合、どっしりと豊かめな声色で歌えると思います。
そしてキーを元に戻した時にそれらの要素を継承させられないか、よく検討してみて下さい。
低いキーで学習した「豊かさ」。高いキーで学習した「軽やかさ」それぞれを元のキーにも引っ張ってこられないか考えながら練習しましょう。
きっとあなたの技術や魅力を活かすヒントになってくれると思います。
この記事を書いた人
-
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。
所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop
最新の投稿
- ミックスボイス2024.11.18加齢を物ともしない声を手に入れるためには?パート3
- 加齢による声の変化2024.11.12加齢を物ともしない声を手に入れるためには?パート2
- 加齢による声の変化2024.11.10加齢を物ともしない声を手に入れるためには?パート1
- 加齢による声の変化2024.11.10加齢による機能性発声障害