ここまでのブログでは加齢による身体の変化、身体の変化による声への影響について話してきました。
今回からは加齢による声への影響を抑えるためにどのような事を行えば良いのかを考えてみましょう。
喉頭の変化に対応するためには?
男女ともに地声・裏声、その2つを上手に行き来するトレーニングを行う事。
地声の時は、声門閉鎖を強く行うため、甲状被裂筋、外側輪状被裂筋の活動。
裏声の時は、声帯を引き延ばす輪状甲状被裂筋の活動が優勢になると言われています。
(実際の筋運動はそんなにシンプルではないのですが、コンセプトを捉えやすくするためご了承ください)
それぞれの筋力低下を防ぎ、筋連動を上手に行うために全ての声区(レジスター)のトレーニングが重要と考えられます。
これら声区をダイナミックに行き来するためには外喉頭筋群の連動も起こると考えられるため、全レジスターをまたいだボイストレーニングは発声に関与する筋肉をほぼ全てトレーニングする事が出来ると考えられます。
声帯の変化に対応するためには?
声帯のストレッチを行う事
ここで言うストレッチ運動は上記の全レジスターをまたいだボイストレーニングの事を指します。
これにより声帯の筋肉が萎縮するのを防げると考えられます。
オンセット・トレーニング
声門閉鎖を俊敏に行うオンセットはとても効果的だと思います。
桜田ヒロキ個人的にはここ数年、このオンセット・トレーニングに注目しており、桜田のクライアント様には定番のエクササイズとなっています。
瞬発系のトレーニング
リフやトリル、ビブラート等を使った瞬発系のトレーニングは声帯や周辺筋の運動スピードを向上するのに役立つと考えられます。
水分摂取を心がける事
喉頭の粘液産生腺の数と機能が一般的に年齢とともに減少し、声帯の潤滑が少なくなり、乾燥しやすいため、粘液の生成が減少する可能性があります。
女性の場合、閉経期にエストロゲンが低下すると、声帯を含む粘膜組織の水分レベルが低下する可能性があります。
男性では、アンドロパ症(テストステロンの漸進的な減少)も組織の水分補給に影響を与える可能性があります。
一般的に水分補給レベルは低下する可能性があります。
高齢者は、喉の渇きの知覚が減少、腎機能の変化、体液の損失につながる可能性のある薬物(ドリウレンなど)の使用など、いくつかの理由で脱水症になりやすいです。
組織は若年時よりゆっくりと再生します。
人が年をとるにつれて、組織の再生と修復に対する体の能力は遅くなり、声帯組織の健康と適切な水分レベルを維持する能力に影響を与える可能性があります。
この理由から、年齢を重ねた歌手は、声帯の潤滑を維持するのに役立つ水分補給を積極的に行う必要があります。
いかがでしたか?
次回からは呼吸器の変化、筋力の変化、神経伝達の変化に対して考えられる対処方法を考えていきます。
桜田ヒロキ個人的には、年齢に適合した発声法のトレーニングを行っていけば老年期まで歌を楽しむ事が出来ると思います。
現在いらしているクライアント様は76歳で現役でコンサートやテレビ出演などご活躍されている歌手になります。
加齢による身体と声の変化とは?
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この記事を書いた人

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米国Speech Level Singingにてアジア圏最高位レベル3.5(最高レベル5)を取得。2008〜2013年は教育管理ディレクターとして北アジアを統括。日本人唯一のインストラクターとしてデイブ・ストラウド氏(元SLS CEO)主宰のロサンゼルス合宿に抜擢。韓国ソウルやプサンでもセミナーを開催し、国際的に活動。
科学的根拠を重視し、英国Voice Care Centreでボーカルマッサージライセンスを取得。2022–2024年にニューヨーク大学Certificate in Vocology修了、Vocologistの資格を取得。
日本では「ハリウッド式ボイストレーニング」を提唱。科学と現場経験を融合させた独自メソッド。年間2,500回以上、延べ40,000回超のレッスン実績。指導した声は2,000名以上。
倖田來未、EXILE TRIBE、w-inds.などの全国ツアー帯同。舞台『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』主演・岩本照のトレーニング担当。
歌手の発声障害からの復帰支援。医療専門家との連携による、健康と芸術性を両立させるトレーニング。
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