- 2021.11.01
- 声の健康法
今日は非常に多くのライバーさんやシンガーから受ける質問「声を痛めたら休養期間はどれくらいが理想?」にお答えしようと思います!
これ、ライバーさんやシンガーでなくても思った事はあるんじゃないかな・・・?
治癒のために「動かす」重要性
一昔前までは「治癒」を促すためには「動かさない事が1番!」と信じられてきました。
しかし今日では、必ずしもそれは正しくない事がわかってきました。
例えば、「腰や背中の手術をした。」もしくは「出産時に帝王切開をした。」
いずれのケースも適度に動かす、もしくは体を軽くストレッチをする事により治癒が早まる事がわかってきました。
これはこのまま声帯にも言える事だそうです。
最大72時間の休息時間
音声学者のIngo Titze博士が興味深い質問を何人ものプロの歌手にしてみたそうです。
「酷なパフォーマンスをした後、どれくらい休めたら良いですか?」
多くの歌手は、「1日じゃ足りない。2日なら大丈夫。3日あれば完璧。4日間は多すぎ。」と答えたそう。
続いてIngo博士は分子生物学者にこんな質問をしてみました。
「分子レベルで考えて、声帯がダメージから回復するのにどれくらい掛かりますか?」
「72時間ですね。」
その分子生物学者はこう答えたそうです。
この歌手達と分子生物学者は顔を合わせた事もないそうですが、意味的には同じ回答をしたと言えます。
多くの人達が思っている以上に声帯の回復は早いと言えるのかもしれません。
回復が24時間では追いつかない場合、徐々に休息の時間を増やす方法
どうしてもライブ本番や配信を続けなくてはいけないような場合、戦略的な休息方法が重要になってきます。
・「増加型の休息期間」の作り方
ここでは、休息時間を「無発声期間」とします。
日常の会話もできるだけ避けて最低限の会話で済ませます。
24時間を最低休息時間として48時間、72時間と徐々に増やす方法が考えられ、最大で72時間までとします。
明らかに声がダメージを受けてしまっている場合は自己判断せず、最低48時間の休息を摂り。
音声外来やボイスクリック、つまり声を専門とした医師の診断を仰ぎましょう。
・「声の使用時間の減少型」の休息法
例えば配信などで声を使う時間を1日4時間×週5回の場合
声の使用時間を1日3時間までに制限して、週5回の声の使用日を継続。
声の回復具合、ダメージの蓄積度を観察する。
声の回復が芳しくない場合、中1日48時間の「無発声期間」を作る。
もしくは声の使用時間をさらに1時間減らし、1日2時間までとする。
前章のIngo Titze氏の「最大72時間の休息方法」からすると①の方法がおすすめと考えられますが、どうしても声を使う日数を稼ぎたい場合は②の方法も検討できると思います。
歌手が一晩、コンサートを歌いきらないといけない場合はお医者様へ
声を専門とするボイスクリニックや、音声外来では一時的に声帯の炎症を抑え歌えるようにする方法を取る事もできます。
ただし、声帯のダメージそのものを治す方法ではなく、一時的に腫れや炎症を抑えると言う方法以外は存在しないので、困った時の対処療法と考えておくと良いと思います。
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喉の潤滑改善方法について
この記事を書いた人
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。
所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop
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