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何が原因で声が出しにくくなりますか?
声が出しにくい!?機能性発声障害に陥るプロセスの例を解説では、どの様なケースで発声障害に陥るのかを確認しました。 機能性発声症と診断される方は大きく分けて過緊張性型と低緊張型に分けられます。 こちらの図を観ると左側に近づけば低緊張型。 真ん中が異常がない、技術が高いと言えると思います。 右側に行けば過緊張性型となります。 この記事では、どの様な状況が起きると過緊張性型や低緊張型の機能性発声症が起こりやすいのかを今までの症例を音声学をヒントにまとめました。 それでは異常が出るパターンの解析例をみてみましょう。 どの音域でエラーが起こりやすいのか 低音域〜中音域〜高音域のいずれかでエラーが起きるのか。 全音域でエラーが起きるのか。 過緊張性型も低緊張性型も広い音域でエラーが起こる事が多いですが、過緊張型は発声に技術を要する高音域でのエラーが起こる事がとても多いです。 低緊張性型の方は低音域の声門閉鎖が弱い、高音域での声門閉鎖が強いと言うのはレアなように感じます。 どの母音でエラーが起こりやすいのか 「あ い う え お」の、どの母音でエラーが起… 続きはこちら≫
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声が出しにくい!?機能性発声障害に陥るプロセスの例を解説
- 2022.12.20
- 声の健康法
前回のブログ「声が出しにくくなった!原因を探る」で紹介した機能性発声障害。 その1つの例として考えられる「誤った発声パターンを学習してしまう」と言う事を紐解くために人間の運動学習について確認してみましょう。 人間の学習プロセスとはどんなもの? 歌や楽器の演奏、演技など技術習得のプロセスを観てみましょう。 ここでは歌唱技術の1つの例として「ビブラート習得」のプロセスで考えてみましょう。 1 無意識的に出来ない ビブラートと言う技術自体を知らない状態です。 技術の存在を知らないので、自分が出来るかどうかもわからない。こういった段階の事を指します。 2 意識的に出来ない これはビブラートと言う存在を知って、ビブラートをかけてみようと試みたが、思うように出来ない。この段階を指します。 3 意識的に出来る この段階ではまだ不安定ではあるものの、意識をすればビブラートをかけられるようになった状態です。 この段階から「出来る」と呼べる段階になっていきます。 4 無意識的に出来る 特に何も考えなくてもビブラートが掛かるようになっている段階です。 よく「… 続きはこちら≫
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声が出しにくくなった!原因を探る
当スタジオには歌が上手になりたいと言う方の他に「以前出ていた歌声や芝居で使っていた声を取り戻したい」と言う目的でボイストレーニングにお越しになる方も多くいらっしゃります。 主な症状はこちらです ・高音が出しづらくなった ・裏声が出しづらくなった ・声が詰まるように感じるようになった ・声がかすれるようになった ・声割れが起こるようになった 等です。 ボイストレーナーがトレーニングを行うのは、病理性がない、もしくは医師が話声を超えるトレーニングを許可した場合になります。 病理性の疑われる場合は、まず医師の診察をお勧めします。 東京都内でしたら音声外来の医師とも繋がりがありますので、ご連絡いただければ紹介させていただきます。 機能性発声障害とは これらの症状は機能性発声障害と呼ばれる事もあり、特にプロフェッショナル・ボイスユーザーを悩ませる症状です。 機能性発声障害は「音声に異常を認めるにもかかわらず、声帯に原因となる器質的異常を認めないもの」と定義されます。 前にも述べていますが、この診断を受けた場合、まずは医師の指示にしたがって治療や言語聴覚… 続きはこちら≫
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ヒアルロン酸の経口摂取は喉や声帯の加湿に有効か?
キユーピー株式会社が2021年6月に「国際ヒアルロン酸学会」で発表した研究では、 経口摂取したヒアルロン酸が大腸の腸内細菌によって分解、吸収されて皮膚で作用する仕組みを解明したとの事です。 この研究で発表された概要は以下の通りです。 ・この研究では口からヒアルロン酸を摂取する際、胃液や腸液では分解されず、大腸の腸内細菌によって分解される事が確認された。 ・分解された低分子ヒアルロン酸が吸収されて皮膚に到達することが明らかになった。 ・三次元皮膚モデルを用いた試験で、コラーゲン代謝(真皮におけるコラーゲン分解と合成)を活性化することも分かりました。 この研究からプロ・ボイスユーザー達へ考えられる恩恵 口から摂取したヒアルロン酸が皮膚に到達しているのであれば、ヒアルロン酸が声帯に到達する可能性は高いのではないかと考えられます。 また体内のコラーゲン代謝が高まるのあれば、声帯の靱帯層の健全な状態の維持が期待出来るのではないかと考えられます。 声帯の最も外側にある上皮層(epithelium)はヒアルロン酸が主成分。 声帯の中間層にある靭帯層(ligaments… 続きはこちら≫
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発声筋にも速筋と遅筋がある?
骨格筋は筋線維が収縮することで力を発揮しますが、収縮速度の速い「速筋」は、大きな力を短時間に発揮することができ、瞬発力やパワーが必要な運動を行うときに活躍します。 ただし疲労に弱いとされています。 一方、収縮速度の遅い「遅筋」は、長い間収縮し続けることができるので、持続的な運動を行うときに活躍します。 ただし瞬発的に強い力を生み出すのに弱いとされています。 人間の体は筋肉の部位により筋繊維の割合が異なります。 体の部位毎に使われる用途などによってこの割合を変えながら進化していったのかもしれませんね。 声をコントロールする喉頭の各種筋肉にも割合の違いはあるのか? National Library of Medicineに掲載されている論文では内喉頭筋の筋繊維の割合が書かれています。 Thyro-arytenoid muscle (甲状披裂筋) 声帯の収縮筋として機能。 発声においては声門閉鎖、地声の生成が主な機能とされます。 2/3が速筋。1/3が遅筋。 Crycothyroid muscle(輪状甲状筋) 声帯に張りを作る。 音程のコント… 続きはこちら≫
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歌唱に最適な呼吸法とは?
古くは歌は「呼吸の芸術」と呼ばれていた事もあるくらい重要視されてきました。 近年では声帯の運動解析や共鳴の音響解析に注目が集まり、逆に呼吸は軽視されているように感じます。 声を作るのには呼吸(Energy Source)、声帯(Vibration)、共鳴腔(Resonance)の3つが必ず必要となります。 歌において呼吸は必要な音程、音量、音色を出すのにあたり最適な呼気を声帯に送る必要があり、非常に重要なシステムである事に変わりありません。 呼吸→声帯で作られる原音→共鳴腔 と言った流れのプロセスになりますが、それぞれ三つ巴になっているように考えると良いと思います。 1つのシステムにエラーが生じると全てのシステムに異常が起こるようになります。 とすると、呼吸と言うシステムは共鳴、声帯と同じくらい重要な物になります。 いくつかの例として・・・ ・呼気が少なければ、声門の閉鎖は強くなります。 ・呼気が多すぎれば、(声門の閉鎖は弱くなる事もありますが、多くの場合で)過度に声門を閉じようとし、過緊張を引き起こします。それは声道の形状にも影響を及ぼします。… 続きはこちら≫
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呼吸のメカニズム 肺の容量について
声を出すのにあたり声帯の原動力となる呼気は非常に重要な役割を果たします。 今回は呼吸のメカニズムを紹介します。 肺は健康な成人で5〜6リットル程度の容積を持ちます。 この図はその容量をどのように換気しているのかを示した図になります。 一回換気量 (Tidal Volome) グラフの中腹で小さく上下している部分です。 主に横隔膜を使った呼吸とされています。 これはTidal Volumeと呼ばれ、リラックスをしている時、睡眠時の呼吸になります。 約500ml程度、吸って吐いてを繰り返します。 会話程度の発声、徒歩程度の運動が始まった途端に500mlの容量では息が足りなくなるため、次の容量に移ります。 呼気時には主に肺が元のサイズに戻ろうとする弾性と横隔膜のリラックスで行います。 ※横隔膜は吸気時に縮む(筋肉に力が入る)呼気の際には緩みます。 吸気予備量 (Inspiratory Reserve Volome) 会話をする、運動をする。そして歌を歌う時にはこの容量をフル活用します。 この時に使える息の量は3000mlくらい。 主に胸郭… 続きはこちら≫
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ライブ当日のボイストレーナーの仕事とは
- 2022.04.30
- ボイストレーナーのお仕事 声の健康法
ボイストレーナーの仕事の多くはスタジオでのレッスンとなりますが、ライブ会場やテレビ収録の現場まで伺い、アーティストの声を整える事もあります。 当日リハーサル前のウォーミングアップ ウォーミングアップの場所はアーティストによって異なります。 ボイストレーナーの部屋を専用に充ててくれる事もありますし、アーティストの楽屋で行う事もあります。 GENERATIONSのライブツアーに帯同した際はボイストレーナーの部屋が用意されていました。 「昨日はよく寝れた?」「疲れ残ってない?」等なんて事のない会話からその日の健康状態のチェックや話し声を聴き、その日の声の状態をチェックしていきます。 この時点での声の出方は、後のリハーサルから本番に向けての声のチューニングの仕方に影響が出ますので、慎重に聴き分けます。 チェック項目は ・話し声の低さ、高さ ・話し声にかすれはないか? ・歌い声(地声)の音程はフラット傾向にないか? ・歌い声(地声)のツヤ、響きは良いか? ・裏声が直ちに出せるか? 極端な場合、この中のチェック項目で、、。 「話し声が低く、かすれ… 続きはこちら≫
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リハーサル時にボイストレーナーは何をするのか?
- 2022.04.28
- ボイストレーナーのお仕事 声の健康法
ボイストレーナーのレッスンスタジオ以外での「現場仕事」と言ってもあまりピンと来ないかもしれません。 僕の場合も先輩ボイストレーナーの仕事に付きそって、ライブやレコーディングに行って勉強した経験もありません。 今日ここに書く事は、桜田ヒロキが「こんな事をやったら喜んでもらえるだろうな」と言う事をやっていった結果、仕事として成り立っていった事の紹介となります。 ウォーミングアップ&喉周りのストレッチ 「本番前のウォーミングアップ方法」で書いたのでこちらをご覧下さい。 リハーサル前にボーカル・ウォーミングアップをに行います。 この後に待つモニターチェックで声が本番に近い状態で仕上がっている事が重要です。 ウォーミングアップをする事、ウォーミングアップの仕方に寄って歌声は変わりますし、それはアーティスト本人の歌いやすさにも大きく関わります。 ※ライブのモニター環境とは、客席向けに作られた音響(カッコよい音優先)ではなく、アーティスト本人が歌いやすさを最優先した設定で作られた音です。 モニターチェックの対応 現在のライブでは、多くのアーティストがインイヤーモニ… 続きはこちら≫
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ライブ、レコーディング前のボイス・ウォーミングアップでは何をするか?
- 2022.04.27
- ボイストレーナーのお仕事 ミックスボイス 声の健康法
歌っている方であれば歌唱において、ウォーミングアップを行う事がとても重要な事はご存じの通りでしょう。 オーストラリアのある学者によって行われた実験では歌手がウォーミングアップ前、そしてウォーミングアップ(25分間)後の歌唱(8小節)の評価を行いました。 評価項目は ・声の甘さ ・明るさ ・喉に感じるストレス ・ビブラート ・歌唱クオリティ ・トーンクオリティ(声色) ・発声技術における集中力 ・自信の有無 ・声の響き ・シンガーの内に感じる安心感・安定感 ・声から聞こえる不安感 ・声から聞こえる疲労感 など多岐にわたる項目を歌手本人6名。そして専門家8名の耳で確認すると言う方法で行いました。 結果は予想通り、全ての項目で歌手自身、専門家すべての評価がウォーミングアップ後に大きく向上しました。 この実験自体は歌手や専門家の知覚で行われましたが、この研究の全てに関わった人がウォーミングアップ後の歌唱評価が向上したのは、、、 まぁ当然と言えば当然ですね。(笑) では桜田ヒロキはプロフェッショナルの歌手のライブ会場やレコーディングスタジ… 続きはこちら≫