声に置いてどのような仕組みで音の高さを生成しているのかを考えます。
声の高さの生成は一般的な認識よりも複雑な仕組みをしています。
声帯でどのように音程をコントロールしているのか?
主に2つの要素でコントロールをしています。
1 声帯の長さを変える
2 声帯にかけるストレスを変える。(ストレスを加えると硬化します)
ではどのように長さとストレスを変えるのか?
甲状披裂筋(TA)の活動。
活動すると声帯は縮みます。声帯のストレスは高くなります。
甲状披裂筋は声帯の内側に走っています。
輪状甲状筋(CT)の活動。
活動するとと声帯は伸びます。声帯のストレスは高くなります。
呼気圧を高める。
呼気圧を高めると動的なストレスが声帯に加わります。
輪状甲状筋(CT)と輪状甲状筋(CT)の活動の関係性
輪状甲状筋は垂部(CT1)と斜部(CT2)左右対にになっています
このモデルは喉頭を左側から見た状態です。
こちらのCTとTAのモデルを観ると、垂部(CT1)は縦方向への力。斜部(CT2)は斜め下方向への力を担っています。
声帯を伸ばす事により、声帯にストレスを加える事を考えると、垂部(CT1)の方が甲状軟骨を傾ける力を作りだす事が用意なのがわかります。
この事から、音程の幅が大きい場合、垂部(CT1)が優性の動きが優勢、音程の幅が小さい場合、斜部(CT2)の動きが優性に使われると聞いた事があります。
またこの図のSlip Jointと書かれている部位は輪状甲状関節で、単純に点で結合されているわけではなく、甲状軟骨を傾けるプロセスの中で前方に甲状軟骨が滑り降りるようになっています。
高音部はTAよりもCTが優性になる
CTとTAの動きを観るために作られたモデルはとても優秀で、声帯を縮める方が強いか?(甲状披裂筋)声帯を伸ばす方が強いか?(輪状甲状筋)
これを容易に理解させてくれます。
1 輪状甲状筋は甲状軟骨の重さを使って声帯にストレスを加えられる
甲状軟骨の重さは成人女性で0.5g前後、男性で1g程度だそうです。
2 輪状甲状筋は輪状甲状関節をテコにする事が出来る
これが最も輪状甲状筋が優位性を発揮する仕組みだと思います。
いかがでしたか?
力任せに地声の主となる筋肉である甲状披裂筋と輪状甲状筋を戦わせながら、低音から高音に移動するとひっくり返ってしまうのには、このような物理現象が働いています。
従って高音時の発声は無理矢理、地声で怒鳴るのではなく徐々に甲状披裂筋を緩めていく(徐々に地声〜ミックス〜裏声へ変化させる)と言う事が重要な事が分かると思います。
近年のボイストレーニングではCT VS TAと言った考え方がかなり浸透してきましたが、それにはこの様な体の機能や、物理が作用しています。
今日紹介したのは声の高さの生成のごくごく一部です。
そして声には高さだけではなく、音色、音量と言った要素が加わりますので、声の要素全体で観ると本当にごくごくごく一部と言う事になります。
今後、徐々に紐解いていければと思います。
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この記事を書いた人
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。
所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop
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