声帯の「部位毎に」特性が違う!?

声帯にはおおまかに粘膜、靱帯、筋肉の層があります。
この3層のどこを振動体とするのか?で発声出来る限界の高音は変わります。

このグラフは声帯の粘膜、靱帯、筋肉のそれぞれに分け、声帯を引っ張るためにどれだけのストレスが必要なのかを計算したモデルになります。
左側の線から粘膜、靱帯、筋肉です。

このグラフから読み取れるのは下記の通りです。

声帯の伸び方は一定ではない

縦軸がストレスの度合い。横軸が何パーセント声帯の部位が引き延ばされたかを表しています。

1つの例としてグラフの右側の点線、筋肉の層を観ると、
15%声帯の筋肉層を伸張させるのに、約2kPa程度のストレスが必要。
30%声帯の筋肉層を伸張させるのに、約10kPa程度のストレスが必要。
長さを15%変えるのと、30%変えるのでは実に5倍の力が必要と言う事になります。

つまり声帯を引き延ばせば引き延ばすほど声帯は硬くなり、さらに引き延ばすが大変になると言う事です。
高音になれば、少し音程を上げるのにも大きな労力がいると言う意味では体感的にも一致するのではないでしょうか?

ここで物理の世界で言われる言葉を整理しておきました。
ストレス = 場所にかかる力
ストレイン = 何パーセント元の長さから変更があったか(どれくらい引き延ばされたか?)
剛性 (Stiffness) = 曲げやねじりの力に対する、寸法変化(変形)のしづらさの度合い

声帯の部位毎に硬さが異なる

声帯は筋肉の層が最も柔らかい。
その次に靱帯、最も硬いのが上皮(epithelim)になります。

一般的には上皮と靱帯は、同じように振動をすると言われていますので硬さで言うと、
1 上皮+靱帯(カバー)
2 筋肉(ボディ)
の順になります。


この図を例で見ると筋肉層は10%引き延ばすのに、1.8kPa程度の力。
靱帯は10%引き延ばすのに、3.8kPa程度。
靱帯の方が同じ長さに引き延ばすのに倍以上の力が必要と言うのが分かります。

声帯の剛性が高い状態が、高い音程を作り出すのに重要な要素とすると、高音時の発声は筋肉層よりも靱帯層を振動させる方が有効であると言えます。
柔らかい輪ゴムよりも、硬い輪ゴムの方が弾いた時に高い音が出せるのを想像すれな分かりやすいと思います。

一般的に地声が筋肉層の振動、裏声や頭声が靱帯層の振動と言われるのはそう言う理由があると考えられます。

声帯に掛かるストレスは靱帯と筋肉の両側に加わる

カバー(上皮+靱帯)
ストレスは受動的で主に輪状甲状筋から受けると考えられる。靱帯は自ら縮む事が出来ないため。

ボディ(甲状披裂筋)
甲状披裂筋は声帯内部に走る筋肉で自ら縮む事が出来る。従って自らストレスを声帯に加える事が出来る。

この特性の違いから次回は「声帯の部位毎にストレスを加えると、音程はどのように変化するのか?」を観てみると面白そうですね!

この記事を書いた人

桜田ヒロキ
桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター

アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。

所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop

RECOMMEND
関連動画

ビブラートやフェイク。豊かな声も手に入る練習法!

スタッカートを使ったトレーニングは、フェイク等の素早く動くフレーズに対応出来る柔軟性を養ってくれます。
さらにビブラートをかけるきっかけになってくれたり、豊かな歌い声を育てる等、恩恵をもたらしてくれます。

WATCH MORE

過緊張な発声状態を解決します。

発声において、特に高音域の発声で最も邪魔な物で出来るだけ早急に取り除きたいモノです。過緊張発声(Hyper Tension)、つまり声を出すのが苦しい状態からの解除方法を徹底解説します。

WATCH MORE

リズム感を強化してもっとカッコよく歌いたい!

R&Bを歌いたいのだけど、キレがなく、なんとなくまったりしてしまうと言うのが悩みのクライアント様のケースを解説します。

WATCH MORE

頭声も地声も手に入れたいミュージカルを志す俳優

劇場(ミュージカル・シアター)での歌唱は「歌をしっかりと聴かせる」だけでなく「言葉・セリフを明瞭に伝える」と言う事も大きな技術の1つになります。

WATCH MORE

トレーニングで習得したミックスボイスを実際の曲で使えるようにしたい!

ボイストレーニングに通って高い声も力強い声も身についてきた。では実際の曲でそれをより有効に使う方法を知りたいクライアント様のケースを解説します。

WATCH MORE

高音の地声やベルトを出す前のウォーミングアップ方法を大公開!

「ベルティングの練習する前に、どんなエクササイズってどんな練習をしたら良いの?」そんなあなたのために、2オクターヴを使うボイトレメニューをご紹介していきたいと思います!

WATCH MORE
レッスンを予約する