- 2021.06.01
- ミックスボイス
「ホイッスルボイスって何のこと?」
「ホイッスルボイスの事は知っているけど、自分はあんな声出せない・・・」
などといった方達もいらっしゃることでしょう。
今回はホイッスルボイスとは何なのか?詳しく解説をしていこうと思います。
まずはこちらをご覧ください。
実際に聞いてみていかがでしたか?
まるで笛の様な声で、小鳥が鳴いている様にも聴こえませんでしたか?
実はこのホイッスルボイス。出し方は1つではなく、大きく分けて2つの出し方があると言われています。
どのような方法があるのかをご説明していきましょう。
ホイッスルボイスを出すための2つの方法
サンフランシスコで開かれたVocology in Practice(V I P)の学会において、ユタ大学の音声学者Ingo Titze博士のお話がありました。
※Ingo Titze博士と桜田ヒロキ
博士によると、ホイッスルボイスには2通りの出し方があるそうです。
①気流型発声(Turbulence Type)
この発声は、口笛と同じ方法です。
これは、
・声帯は振動していない
・声帯の間を通る気流で作られる音
といった特徴があります。
口笛は呼気を口から吐き出す際につぼめた唇などの口腔の器官に強く息の空気の束を当てることにより乱気流を発生させ、空気の振動、すなわちノイズを発生させる(圧力誘導による渦巻き振動)。
つまりは、通常の声帯を振動させて発声するパターンとは異なる方法で作っていると考えられます。
②構音型発声(Phonation Type)
これは通常の発声と同じ方法です。
声帯を縮める事なく、声帯のストレッチ。これで音程の上昇に限界が来た際に声帯の一部を硬化させることによって、発声しています。
ホイッスルボイスは言葉を発する事は出来ない
この音域になると、言葉(母音)を発音することはできません。
声帯の振動で作られた音は、ホイッスルボイスの極端な高さになると、倍音を多く含ませることが出来ず、純音に近い音になります。
(高い声は裏声の方が出しやすく、裏声と地声で比べると裏声の方が母音の認識が難しくなる事を想像するとわかりやすいと思います)
そして母音の発音をするためには、少なくとも2つ以上の周波数特性が必要になります。
※この図は「い」と「え」の中間母音と考えられますが、この2つの周波数特性の山が母音を定義するのに必要になります。
①ホイッスルボイスの喉頭原音は、ほぼ純音のみで作られる。
②声道(声帯から唇までの共鳴腔)の持つ周波数特性を出している音程が超えてしまっている。
仮にピアノの一番右端をホイッスルボイスで出した場合、、、。
ピアノの1番上の4185.6Hzになるので、F2の最も高い「い母音」のF2の周波数2400Hzを軽く超えてしまっています。
(それでは極端だとしてもC7(2092.8Hz)を発声出来る女性は訓練を積んでいる方では、そこまで珍しくはありません。)
人体構造上、超高音になると母音の区別が不可能になる事が分かると思います。
ちなみに夜の女王のアリアの最高音はF6(3点ヘ音)、1396.913Hzです。
気流型と構音型。音の違いや特徴ってどんなもの?
ここからは、憶測になってしまいますが、ご参考いただけると幸いです。
構音型発声(Phonation Type)のホイッスルボイスを出す場合、通常発声方法とあまり変わりません。(ただ滅茶苦茶高い)
よって、『音が高くなればなるほど、息を少しずつ減らす』といった方法が使えると思います。
また、通常の歌唱音域〜ホイッスルボイス音域にスムーズに切り替えるのは技術的には可能だと考えられます。
理論的には声帯の振動を徐々に上げるだけだからです。
先述にあげた動画を見ている方のほとんどが、こちらに当てはまると思われます。
一方、気流型発声(Turbulence Type)のホイッスルボイスを出す場合は、声帯自体を硬直させる必要があります。
声帯の間に乱気流を起こす必要があり、それなりに息をたくさん使う必要があると考えられます。
このタイプの発声は、通常の歌唱音域からスムーズに繋げることは不可能(もしくは非常に難しい)と考えられます。
なぜなら、上昇するフレーズで通常の構音(声帯を振動させる)から気流型発声(声帯を停止させる)に切り替えなければならないからです。
「ホイッスルボイスは出せるけれど、上昇途中で一旦音が消えてしまう」
といったタイプの方は、気流型発声(Turbulence Type)の可能性が高いと思われます。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
今回は、ホイッスルボイスの発声の2つの方法についてご紹介をしました。
少し難しいお話になってしまいましたが、まずはざっくりとでも良いので、理論をご理解頂けると嬉しいです。
そして、また新たに自身の歌声に磨きをかけたいと思って下さった方もいるのではないでしょうか?
最後については、桜田ヒロキの憶測も取り入れた内容になりましたが、皆さんの今後の成長の後押しになっていれば本望です。
この記事を書いた人
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。
所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop
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