顎や顎の下の緊張を和らげる方法ってありますか?

高くて苦しい音域になってくると顎が前に出てくる?
そもそも顎が前に出てくる?
顎の舌の筋肉がカチカチに硬くなっている?

今日はそんな悩みを解決する練習法をお届けします!

歌っていると顎が前に出てくる?

トレーニングが充分でないシンガーの顔って顎を前に出して、苦しそうに高音を歌うイメージってないですか?

それは主に舌骨上筋群(Suprahyoid muscles)と言う舌骨から生えている筋肉達が過剰に働いているからと考えられます。

特に下記の2つの筋肉は顎の舌から、喉側に向かう筋肉です。(顎側が起始。舌骨が停止。)
・オトガイ舌骨筋 (Genniohyoid muscle)
・顎二腹筋 (Digastic muscle)

これらの筋肉をかためて顎を前にスライドすれば喉頭を上げる補助となる可能性があります。
高音を出すために喉頭を上げる行為は、音色が細く鋭くなるため音楽的に好まれにくく、何よりも苦しいです。
あまり良くはなさそうですよね?

舌骨上筋群が働く原因はもう一つあります。

舌骨上筋群は、肩甲舌骨筋(Omohyoid muscle)と連動して働く事により舌骨の位置を動かないように固定すると言う役割もあります。
舌骨は喉頭と共に体で数少ない宙づりになっている軟骨です。
これを歌唱時に固定をする事は共鳴空間のコントロールをしやすくする可能性はありそうです。
逆に肩甲舌骨筋だけが働き、舌骨上筋群が働かない場合、喉頭は背面+下方に喉頭が引き込まれ、披裂軟骨が引っ掛かり声帯を十分に閉じる事が出来なくなってしまう可能性があります。

ですので、一概に「顎の舌の筋肉が働くから悪い」とも言えないかもしれません。

一般的な舌骨上筋群のリリース方法

一般的にはこれらの舌骨上筋群を指で圧迫する事が多いのですが、
声の高さ、音色、声色、息の量などでダイナミックに収縮、弛緩をしている筋肉群に対して一定の力で圧を加えるのが果たして良いのか?

近年、僕は疑問を抱いています。

理由としては一定の力で外側から圧を加えると、「テンション vs テンション」の構図を作りやすく、筋肉は緩もうとするのではなく、反作用としてさらに硬直する可能性があるのではないかと考えます。

そこで考えたのが、
「もしかしたら、外側から圧を加えるのに動きをつけてみたらどうだろう?」
でした。

物理学の世界では、
ダイナミック・システムズ・セオリー(dynamic systems theory : DST)と言う言葉があります。

これを調べると、
「時間の経過を伴って変化するシステムを記述し,説明する理論。 システムの振る舞い は通常、ある変動性の範囲で安定している。」とあります。

分かりやすい例えでは、
自転車の走行する時の、「細かいハンドル操作」や、「人間の体重移動」によるバランスの取り方ではないでしょうか?
まっすぐ走行している自転車のバランスの取り方は、時間の経過なしでは説明する事は出来ませんね。
つまり写真を使って説明する場合、複数の写真が必要ですし、場合によっては動画を使った方が説明が簡単そうですね。

声もダイナミック・システムズ・セオリーで考えると理解しやすいと思います。

声を出した瞬間にそこに「音程(周波数)」が存在します。
周波数は「一秒間に何回、空気を振動させたか?」
声においては「一秒間に何回、声帯を振動させたか?」
となります。

そして音程変化や音色変化が起こった瞬間に、筋肉のバランスや息の量、流れともに変化が起こります。
これらの変化は時間なしでは説明することが出来ません。

では筋肉群のリリース方法も動きのある方法が有効である可能性があります。

例えば、
・顎を掴んで軽く揺する方法
・舌骨上筋群を一定の力ではなく、そとからバイブレーションを加える
等が考えられます。

動画で説明しましたのでページ上段の動画をどうぞ!
今日はちょっと難しいお話しになりましたが、トレーニング方法の現在のところの結論としてはこの2つです。(笑)

ただ、この2つのエクササイズは声道内、喉頭内の過緊張を含むと考えられる、
多くの過緊張のケースで改善が見られる事から、もしかすると音声セラピーの領域でも利用できるかもしれません。

過緊張発声に悩む方はぜひお試し下さいませ!

声が出しにくくなった!原因を探る

この記事を書いた人

桜田ヒロキ
桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター

アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。

所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop

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